第8次構造改善計画プロローグ
【業界をとりまく状況】
圧接業界は、継手市場の多様化に応えるため、継手のエキスパートとして溶接継手、機械式継手に取り組み、総合鉄筋継手業として顧客の要求に対し、最適な技術を提供することを目指しました。その成果、継手市場を拡充させることになりました。
この5年間、建設業界は慢性的な人手不足に悩まされました。そして、今もなおこの状況は続いています。人手不足の要因は、重層下請け、社会保険制度の未加入、3K、4K、といわれる労働環境から、建設業界で働く意義が見いだせず若者から敬遠されてしまいました。
現在、業界の技量者の数は2,400名と2003年5,600名をピークに減少し、この10年間で1,000名近く減少しています。この状況を打破するために、アジア諸国から技能実習生を受け入れる方向にシフトしました。しかし、日本の技能実習制度は低賃金と実習生の酷使で「奴隷制度」と海外から非難されました。
国土交通省は人手不足の解消策として、2018年12月25日に在留資格「特定技能」を新設しました。翌1月、特定技能業種として、鉄筋継手(圧接継手、溶接継手)が認められ、海外から受け入れることが可能となりました。
2020年10月26日、第203回臨時国会の所信表明演説で、菅総理大臣(当時)は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。
まず、2030年までの温室効果ガス46%削減(2013年度比)とする目標に対して、全圧連は、カーボンニュートラルを第7次構造改善計画の追加重点事業として、2022年から天然ガス(カーボンニュートラルLNG:以下CNL)を燃料とした高分子天然ガス圧接工法の全国展開、2023年から水素・エチレン混合ガスを用いたガス圧接工法の技術構築を目指しました。
2024年7月7日、建設業法、入札契約適正化法(入契法)、公共工事品質確保促進法(品確法)の3法改正による第3次担い手3法が成立しました。
これにより、処遇改善に向けた適正な労務費を確保して、受け取った労務費の原資を下請けに確実に支払うため、労務を計算する基準(標準労務費)の歩掛りを構築することになりました。
2025年、働き方が根本的に見直されることになります。年々、深刻化する人材不足、若年者の業界離れに歯止めをかけるために処遇改善が喫緊の課題となっています。
- 【 基 本 方 針 】
- 第8次構造改善計画
- 『信頼できる技術集団を目指して』
-担い手確保、クリーンエネルギーの行く先-
第8次構造改善計画のメインテーマとして「信頼できる技儒集団を目指して」、サブテーマとして「担い手確保、クリーンエネルギーの行く先」を掲げ、第三次・担い手3法から始まり、次世代の担い手の確保、2030年温室効果ガス46%削減目標(2013年度比)に向けてクリーンエネルギーへの技術転換がスムーズに行えるか、社会の情勢を見据え、第8次構造改善計画を推進していきます。
概 要「challenge to change=変化するものが生き残る」
造改善計画は、5ヵ年を事業単位としてアクションプランを策定してきました。第8次構造改善計画は、2025年4月から2030年3月までを事業年度として、事業を展開していきます。
第8次構造改善計画では、業界がどのように変化に対応していくか、そのキーワードは、「担い手の確保と特定技能外国人」、「働き方改革と処遇改善」、「カーボンニュートラルとクリーンエネルギー」と業界は歴史的転換点を迎えます。
今後、外国人が圧接技術を習得し、外国人の圧接指導員を育成し、海外への技術供与を行い、海外に向かって市場の開拓をしていかなくてはなりません。燃料もCNL、水素・エチレン混合ガスは、もはや代替エネルギーではなく、クリーンエネルギーとして、社会的認知を受けていく時代となります。
第8次構造改善計画の5ヵ年は『challenge to change=変化するものが生き残る』、変化を待つのではなく、自ら変化をしていくことで、歴史的転換点を乗り切っていかなくてはなりません。
第8次構造改善計画で直面する課題は以下のとおりです。
(1)特定技能外国人による担い手確保
2018年12月25日に在留資格「特定技能」が新設され、2019年1月、特定技能業種として、鉄筋継手(圧接継手、溶接継手)が認められました。業界では、外国人を圧接技術の継承者、次世代を担う技術者として育成していきます。圧接の未来を確固たるものにするため、彼らにライフプランを示していきます。
(2)主要燃料となるクリーンエネルギー
2030年温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指す日本政府の宣言を受けて、カーボンニュートラルを第7次構造改善計画の追加重点事業としました。第8次構造改善では更に高分子天然ガス圧接工法、水素・エチレン混合ガス圧接工法の普及、展開に努め、クリーンエネルギーへの転換を図ります。
(3)働き方改革=処遇改善
今後、10年以内に技量者は5割近く減少する。人材不足の背景は人口減少だけでなく、賃金の問題が内在しています。年々、深刻化する人材不足、若年者の業界離れに歯止めをかけるために、処遇改善が喫緊の課題となっています。
建設業法が改正され、1次で認められた労務費を下請けの技能者まで、その額を支払うことができるように整備することが求められています。受け取った労務費の原資を下請け企業が技能者へ適切な賃金を確実に支払うようにするために、労務を基準とした標準見積書を作成することが求められています。残業時間の上限規制、4週8休の労働環境に適応した賃金体系を構築するために労務の適正化は喫緊の課題となっています。
経営戦略化ビジョン
経営戦略化ビジョンは、「鉄筋継手業として業種独立」「顧客満足の拡充=品質確保のための適正価格」「働き改革を基盤とした処遇改善」「担い手確保のための環境整備」「外国人の受入れ=外国人技術者の育成」「クリーンエネルギー=脱炭素に向けた取り組み」の6つテーマから構成されており、それぞれのテーマに沿って事業を展開していきます。
1.鉄筋継手業として業種独立
総合鉄筋継手業に向けた動きは、市場の縮小と 技量者の減少と相まって、継手業界は生き残りをかけた大きな転換期を迎えています。構造物が大型化、高層化に向かえば、より高い品質の継手が求められます。そのためには鉄筋継手工事として継手工程を確保して品質を高めていくことが重要です。
しかし、現実は、生産性の向上の名のもとに工程を少なく、省力化、省人化の方向に進んでいます。鉄筋継手の施工は配筋工程の中で行っています。ひとたび工期が遅れると継手の工程を持たない我々は工期圧縮の材料となり、工期が優先されることになります。
継手は構造物を支える要、要の品質を守ることは、我々の責務であり使命です。現在、業種区分において、鉄筋工事は鉄筋加工組立て工事と鉄筋継手工事の2つに区分されています。鉄筋継手工事として業種独立することで継手の技術を守り、次世代に鉄筋継手を継承していくために、業種独立は重要課題となっています。
2.顧客満足の拡充=品質確保のための適正価格
常に顧客の要求に応えるために我々は継手のエキスパートであらねばならない。顧客の求める施工に対して的確にアドバイスを行い最適な技術を提供すること。あらゆる環境下において施工できる技術と品質を維持することが求められています。
継手にとって品質は命です。継手の品質を維持していくため『検査体制の厳格化』に業界全体で取り組んで行かなければなりません。また、品質を確保するためには適正価格での受注が喫緊の課題となっています。限度を超えたダンピングは競争原理を逸脱したものであり、業界存続に大きな影響を与えます。品質確保のため適正価格での受発注を関係団体に求めていかなければなりません。
- ①企業努力による「適正価格」の確保、維持
- ②最適な技術の提供、工法の情報開示
- ③建設キャリアアップシステムの登録推進
- ④優良会社認定取得
3.働き方改革を基盤とした処遇改善
建設工事の適正な施工及び品質確保と担い手の確保のため、これまでも2014年及び2019年に、建設業法・入契法と品確法を一体として改正しました。しかし、厳しい就労条件を背景に就業者の減少が著しく、業界が存続するには、担い手確保に向けた対策を強化することが急務となっています。これらの課題に対応し、必要な担い手の確保を目的とする「第三次・担い手3法」が成立しました。今後、働き方改革を基盤とした事業活動を展開していきます。
(1)4週6休、4週8休における労働環境
10年後、技量者は5割近く減少してしまう。根本的に人手不足の背景には人口減少だけでなく、賃金問題も内在しています。働き方改革で4週6休、4週8休となり、労働日数が短縮されれば、給与の出来高制による部分は減収となります。年々、深刻化する人手不足、追い打ちをかける若年者の業界離れ、歯止めをかけるためにも処遇改善が喫緊の課題となっています。
この状況が続けば技量者の減少から圧接継手はマイノリティの継手になってしまいます。そうなれば技術継承どころか、施工体制を組むことすらできなくなります。この状況から脱するためにも業界が一丸となって、処遇改善に取り組み、若手技術者が圧接業界で安心して働けるライフプランを業界として提示していくことが我々の責務です。
- ①関係業界と連携した労務平準化の促進
- ②週休2日、準備期間、天候等を考慮した工期の設定
- ③適正な額の請負金額・工期での下請契約の締結
- ④社会保険への加入促進
(2)処遇改善の推進=労務適正化の構築
建設業法、入札契約適正化法(入契法)、公共工事品質確保促進法(品確法)の3法改正による第三次・担い手3法が令和6年7月7日に成立しました。
この中で、処遇改善に向けて適正な労務費を確保して、最終的に技能者を雇用する下請けまで賃金を支払うことができるように整備することが、建設業法の改正の骨子です。
年々、深刻化する人材不足、若年者の業界離れに歯止めをかけるために、処遇改善が喫緊の課題となっています。
今回、建設業法が改正され、1次で認められた労務費を下請けの技能者まで、その額を支払うことができるように整備することが求められています。受け取った労務費の原資を下請けに適切な賃金を確実に支払うようにするために、労務を基準とした標準見積書を作成していかなければなりません。残業時間の上限規制、4週8休の労働環境に適応した賃金体系を構築するために、労務の適正化を推進していきます。
- ①能力に応じた適切な処遇の確保
- ②適切な労務費の設定、運用基準の策定、適切な賃金の確保
- ③基準労務費よる積算方式の確立
- ④標準見積書の作成と普及展開
4.担い手確保のための環境整備
次世代へ技術を継承していくために、工業高校、大学等で出前講座を開講して、若年者の確保育成に向けて中長期に活動を展開していかなくてはなりません。業界への入職を促進するために幅広い層にアプローチする手段として、職業訓練校、工業高校に圧接講座を開設して、担い手の活動を広める広報活動、支援プログラムを推進していきます。
(1)圧接OJT指導員の育成
鉄筋継手専門の技術集団、これは我々に課せられた使命であり責務です。顧客のニーズを把握し、継手の技術を駆使して最高の製品に仕上げる。高い技術力を持った集団として、そこに活路を見出していく、そのためには品質を維持するための技術、その技術を支えるための知識が不可欠です。常に教育の機会を設け技術の研鑚を行い、高い技術を持った技能者を育成していくことが、業界に求められています。
- ①圧接OJT指導員の育成
- ②登録圧接基幹技能者の育成
5.外国人の受入れ=外国人技術者の育成
2018年12月19日、建設分野における特定技能外国人の受入れに関する検討会議で鉄筋継手(圧接継手・溶接継手)が特定技能業種として認められ、2019年4月1日より鉄筋継手として特定技能での新たな外国人材の受入れが可能となりました。
2024年6月、技能実習制度は人材の確保・育成を目的とする育成就労制度に2027年移行することになりました。この制度は特定技能に要件を合わせ、最終的には特定技能に統合されることになります。
外国人就労者は人手不足の人材ではなく、圧接技術を継承してくれる担い手として育成していくことが業界に求められています。しかし、日本との施工状況の違いから日本で学んで帰国しても、日本で学んだ技術を活かすことができないキャリアギャップが生じてしまいます。今後、彼らのキャリアを活かせるライフプランを構築していくことが、我々の責務です。
- ①外国人就労者に向けた中長期的なライフプランの策定
- ②外国人就労者の資格取得のサポート
- ③担い手として外国人技術者の育成
- ④外国人指導者の育成
6.クリーンエネルギー=脱炭素に向けた取り組み
2030年温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指す日本政府の宣言を受けて、カーボンニュートラルを第7次構造改善計画の追加重点事業としました。2022年から天然ガスを燃料とした高分子天然ガス圧接工法の普及展開、水素・エチレン混合ガスを用いたガス圧接工法の技術の構築を継続事業として展開していきます。
(1)クリーンエネルギー=脱炭素にむけた取り組み
2020年10月、日本は(当時、菅総理)「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。そして2021年4月に「2030年度の温室効果ガス排出46%削減(2013年度比)の高みを目指す」と削減目標の実現に向けて、エネルギー政策の道筋を示しました。
業界はCO2削減のために10年先、20年先を見据え、カーボンオフセットアクションプログラムを策定して、カーボンニュートラル=脱炭素社会の実現に向けて、事業を展開していきます。
CNL、水素・エチレン混合ガスは、代替エネルギーではなく主要燃料として、社会的認知を受ける時代にシフトしていきます。
- ①主要エネルギーとしての社会的構築
- ②クリーンエネルギープロモーションの全国展開
事 業 計 画
全国圧接業協同組合連合会では9つの委員会を中心に以下の事業を展開します。
1.圧接領域拡大委員会
- (1)必要かつ的確な市場調査を行い、受注先の拡大戦略を図る。
- (2)新規得意先を獲得して、受注拡大を目指す。
2.技術・品質保証委員会
- (1)クリーンエネルギーの圧接技術の研鑽
クリーンエネルギーを主要エネルギーとしての認知度を高め、2030年度の温室効果ガス排出46%削減目標(2013年度比)を目指す。 - (2)ZGPシステム施工資格更新講習会
ZGPシステム施工資格更新講習会の開催 - (3)品質向上パトロール
単協との連携で品質向上パトロールを実施
3.原価管理委員会
- (1)全国各地区の圧接単価の市場調査・報告
- (2)各種継手の市場調査報告
- (3)太径鉄筋の施工単価の掲載のアプローチ
- (4)施工単価と労務適正確保のためのアプローチ
- (5)標準見積書の普及展開
4.教育・育成委員会
- (1)登録圧接基幹技能者認定講習の開催
- (2)登録圧接基幹技能者更新講習の開催
- (3)建設技能向上講習会の開催
- (4)圧接OJT指導員育成講習の開催
- (5)圧接OJT指導員リフレッシュ講習の開催
- (6)雇用管理責任者講習の開催
- (7)若年者人材確保のためのプロモーション活動
- (8)工業高校、大学での圧接出前講習の開催
- (9)富士教育訓練センターでの圧接講義の拡充
- (10)外国人受入れ教育
- (11)外国人圧接技術教育
5.総務委員会
- (1)第8次構造改善計画の策定、推進
- (2)全圧連ニュースの発刊
- (3)組合員名簿の更新
- (4)全圧連要覧の発行
- (5)通常総会運営(事業計画・予算編成)
- (6)青年部会の支援
- (7)安全標語の募集・安全カレンダーの発行
- (8)その他、全圧連として活動が必要な事項
6.事業委員会
- (1)全圧連共済制度の促進
- (2)共同購買の導入
- (3)圧接機器等の共同購入品の検討
- (4)中小企業倒産防止共済制度の導入
- (5)小規模企業共済制度の導入
7.外国人事業委員会
- (1)外国人受け入れに係る事業推進
- (2)求人募集及び面接(国内・海外)
- (3)職種説明会(海外)
- (4)圧接技能訓練(海外)
8.事業推進委員会
- (1)総合鉄筋継手業への普及展開
- (2)クリーンエネルギーの事業推進
- (3)外国人材受入に係る事業推進
9.構造改善計画委員会
- (1)第8次構造改善計画の検討
- (2)第8次構造改善事業の推進
以上